『危機管理』という言葉がある。官民を問わず、この危機管理という言葉は人口に膾炙されて久しい。この言葉は、将来起こり得る”危機”に対して、予め対策を講じる基本的な考え方も意味する。
しかしこの言葉、将来起こり得る”危機”を管理するという点に於いて、平常時は”安全”である、という反対解釈をも導く。つまり、安全である状態が正常であって、危機が異常なのであり、その異常な危機に対して事前に予測を行い対策を講じる=管理する、という発想に至るものである。
そういう発想のもとにあっては、将来起こり得る危機は明白ではあるが、それが具体的にいつ起こるものなのかは分からないが、少なくとも平常時である現在は安全であるという甘い帰結を許してしまう。
ここで敢えて『危機管理』という言葉の代替策として、『安全管理』という言葉を提案したい。ここで言う危機管理とは真逆の発想である。つまり、危機は常に存在する正常なものであり、安全こそが自然界に於ける人類にとって奇跡に近い異常な状態である、という発想に基礎を置く考え方である。この奇跡に近い偶然的な異常な状態、されども人類にとっては有益な状態を、人類の未来の為に保持し続ける為に、この安全をマネジメントするというものだ。
ところで、『危機管理』とは大自然の摂理を人類が制御することが可能であるという人間の”傲り”を徴表している側面も否定できない。大自然にあっては、人類など無力そのものであるのだから。