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2011年5月16日月曜日

東電発送電分離論と当事者適格

枝野幸男官房長官は16日午前の記者会見で、玄葉光一郎国家戦略担当相が15日の民放テレビで、送電部門を分離するなど東京電力の事業形態見直しに言及したことについて「選択肢としては十分あり得る」と述べ、今後の検討対象になり得るとの認識を示した。
東電が退職金や企業年金の減額をリストラ策の対象としていないことには「東電が置かれている社会的状況を理解していないと感じた。(東電の資産査定などを行う)第三者委員会で内部状況を政府としても把握し、国民と共有していきたい」と述べ、一層のリストラを求めた。(時事通信:
5月16日(月)12時8分配信
分離は今まで独占的に営業を行って来た巨大企業の解体という点に於いても妥当といえるが、今後起こり得る民事訴訟の当事者適格を継承する法人格は必ず残さなければならないといえる。刑事訴訟に於いては、当事者適格を保有する私人が現経営陣となる。原発事件がある程度鎮静化した折に、いつの間にか当事者適格を保有する主体が消滅していた、、というような事態にならないようしっかりと時勢を見極めて行くべきだろう。
ところで、今までに東電側は如何に甘い考えを貫いているかが見て取れる。役員は就任後に支払われた役員報酬を全額返還するのみならず、将来に於いて受け取る予定だったものも損害賠償資金や自己の会社の運転資金に回すべきであろう。血税は無論、電気料金を値上げすることで賠償原資を国民に負担させるとは、いわく東電の役員や従業員の将来の利益は保全したままで、その責任は結局国民に還元されるという暴論だ。断じて許容すべきものではない。報酬とは適正な利益があって初めて受け取れるものだ。企業年金に於いてもしかりだ。会社として従業員全員が責任を全うする態度があっても良い。経済的損害のみならず、今回の東電原発事件に於いては、全国民否、全世界の人々に対して精神的苦痛(損害)を与えている。とかく無制限に拡大されがちな損害ではあるが、東電側は”原子力損害の賠償に関する法律第3条”の但し書きを持ち出し、いわゆる異常に巨大な天災地変または社会的動乱によって生じた場合はこの限りではないと、損害賠償の責を免れる解釈を主張してきた。しかしながら、敢えて私は本条の様に『異常に巨大な天災地変』が直接的な因果によって今回の事故が生じたものではなく、あくまで人災が直接的な原因であったと断言したい。数日前からのニュース記事により、地震後津波の前には主要電源装置が働かなくなったという真実も表面化してきている。ゆえにこれは直接的には天災によって惹き起こされた事故ではなく、想定された危難に対する準備を現経営陣は故意または過失で看過した結果、さらに天災が2次的な原因となって惹起された紛れもない人災であることは明白である。立法措置に不備があれば、今回の事故(否、事件)を機に、原発事業者の無過失責任をさらに明確化させるべきであろう。東電側の認識では国民は到底納得することが出来ない。
いずれにせよ、東電発送電分離論自体はよりそれぞれの専門的な分野に特化し、なおかつ官僚主義的になりがちな組織を解体し、上流と下流で経営母体を別とすることで抑制と均衡が保てると期待出来る点から賛成できるが、これによっていつの間にか訴訟の相手方たる当事者適格のある法人や私人が不在になってしまうことのないように、引き続き注視してゆきたい。
silichan